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「仕事も育児もこなしたい…そんなあなたのための」

 
   〜「ワ−キングママ」−成功の秘訣〜


(雑誌「OLmanual」2000年8月号にピクシス株式会社 代表取締役、
 P-Club代表 足立知子のインタビュー記事が掲載されました。
 その内容が以下の通りです。)

足立 知子 ( ピクシス株式会社 代表取締役 ・ P-Club 代表 )


 マ−ケテイィング会社と輸入販売会社の経営、そして異業種交流会の主催に一児の母…と4つの顔を合わせ持つパワフルママ、足立知子さん。1つの仕事をこなすも大変なのに、一体どうやって時間を作り出しているのでしょうか。「一度の人生ですから、色々な経験をしたい。でも、どちらとも完璧にこなしているとは言い難いんですけれどね…。」とテレ笑いをする足立さんに、ワーキングママとして仕事と子育てを両立する秘訣について伺いました。

『出産は神様がくれたごほうび』〜がんばりすぎた出産前〜

 
 現在、都内マーケティング会社と社員教育、輸入品卸販売の会社の経営と異業種交流会を主催する傍ら、6歳になる一人娘の母親役を担っています。
 出産をしたのは30歳過ぎの時でしたが、この位の年齢というのは、仕事上責任ある立場になり、ついがんばりすぎてしまうものではないでしょうか。私の場合も例外ではなく、会社を立ち上げて3年目でフル回転していた時期でしたので、出産ギリギリまで無理をしてしまいました。
 出産は5月の予定で、当初は4月末に実家の京都に戻って準備をするつもりでした。そのためには2、3月の受注を控えなければなりません。しかし、「どうしても」と仕事の依頼があり、学生向けのスクールの運営を、ついつい引き受けてしまったのです。通常業務に加えて引き続きの準備も加わり、睡眠時間が3時間という日が続きました。
 何とか準備を終えて京都の病院に行くと、無理がたたったのか、医師に「帝王切開でないとムリだ」といわれてしまいました。しかし、処理すべき仕事をたくさん抱えていたので、不安より先に「帝王切開なら、出産までの予定が確実に立てられる」と思ったのです。そして手術前日の夜中まで必死で仕事を片付けました。

 
 産後はひどい状態でした。帝王切開の傷を忘れるほど頭が割れるように痛くなり、1週間ほどベッドから起き上がることすら出来ないのです。さらに運の悪いことに、丁度その時期に父が交通事故に遭い、昏睡状態が続いた10日後に亡くなってしまいました。思うように身体を動かせず、看病もろくに出来ない自分がもどかしくて悔しくて悲しくて仕方ありませんでした。しかも復帰が遅れた分仕事がたまっていて、お通夜の日は線香の香りに包まれながら、請求書を出す羽目になったのです。悲しいから、辛いからといって放棄するわけにはいかなかったのです。
 出産後は、「仕事が出来なくなるから、今のうちにがんばっておこう」と思いがちです。企業に勤めていれば、なおのこと産休にはいる前にがんばっておこうと思うものでしょう。でも、無理をすれば必ずどこかで皺よせがくるものです。特に30代をこえて出産する場合は、自分の体力を過信しないほうがいいと思います。
 考えてみれば、一生仕事を続けていく女性にとって、ゆっくり休めるのは出産の時くらいです。神様がくれたごほうびだと思って、ゆっくり休んでもいいのかもしれません。



「自分のため」でなく「子供のため」に


 仕事に復帰する時、子供をどこに預けるかということが、働くママの最大の悩みでしょう。これから出産を控えている人は、「保育園に入れるのかしら…」と不安を感じていると思いますが、私の場合はあまり苦労しませんでした。たまたま新聞折り込みチラシに入っていた「キッズスク−ル」というプレイスクールに下見に行って申し込んだところ、待ちもなくすぐに入る事が出来ました。特別に有名な認可の保育園、幼稚園でなければ、思ったより難しくないようです。
 そのスクールに決めた理由は、何より場所が会社に近かったからです。出勤前に預けて終了時間に一度迎えに行き、子供を連れて会社に戻る事ができました。預け先を選ぶ時は、自分の生活の中心が会社と自宅のどちらかにあるかを考える事がポイントではないでしょうか。
 また、預けたのは、自分の仕事のためだけではなく、あくまでの子供が他の人たちとコミュニケ−ションをとれるようにするためです。結果的には自分の仕事が楽になったとしても、「子供のために」という気持ちを忘れてはいけないと思うのです。母親の都合で預ければ、子供も何となくそれを感じ取るものでしょう。そして「母親の仕事を邪魔している」という潜在意識を持ってしまうのではないでしょうか。子供というのは、母親の姿をよく見ているものです。忙しく働きながらも。子供と一緒に過ごす時間を大事にしていれば、「迷惑かけないようにしよう」と知らず知らずのうちに母親を思いやってくれる気がします。おかげで今まで一度も熱を出したり、怪我をして呼び出された事はありません。このことは仕事をする私にとって大変助かりました。また子供に仕事を理解してもらうためには、仕事を手伝ってもらうのも一つの方法でしょう。私の場合、DMの封筒や切手貼りを時々手伝ってもらいますが、それは会社に限らず、家事でもいいと思います。「手伝ってくれる?」と、巻き込み「助かったわ」と褒めてあげれば、子供は俄然はり切ってくれるものです。


彼女のママは私だけ」


 仕事と育児を両立していると、どちらも完璧にこなすのは、正直いって無理な話です。私は異業種交流会を主催している事もあり、人と会って食事をしたり、飲みに行ったりするのが大好きですが、やはり今はそういう時間がなかなかとれません。また会社の業務も、毎日なんとか乗り越えているという感じです。
 でも、今はスローペースでもいいかな、という気がしています。小学校に入れば、仕事に本腰を入れる事もできるし、アフタ−5の時間も今より融通かつくでしょう。その時、またペースを上げればいい。仕事はあとから挽回できても、娘にとって“今”の時間は、取り返す事のできない貴重な時間です。そう考えると自ずと私の比重をおくべきものが見えてきました。
 また、これからワーキングママになる人は、「自分にこなせるだろうか」と不安に感じていると思います。でも、どんなに大変でも、やってみれば答えが出ます。スタートしてしまえば、あとはどうにか転がっていくものなのです。(と私は思っています)要領を覚えたり、助けが出たり、本当に大変でも後から思えば、とても勉強になっていたり、要はやらずに大変だと思うのでなく、一歩踏み出すことです。前向きに、明るく歩き出すことです。かわいい大切な自分の子供がいっしょなのですから。
 仕事も子供も、私にとってかけがえない宝物。そこに自分の存在を実感できるから、がんばれている気がします。ぜひ、皆さんも宝物を手に入れて下さい。(2000年8月)



*2006年時点では、会社内容が多少変化しています。
  また、現在は2児(12歳、3歳)の母です。